母親方のじいちゃんが亡くなって久しく命日を記念し生前携わってきた紙漉きの工程を掲載したいと思います。興味がある方は参考にして頂けたらと思います。
現在は数少なくなってきた紙漉きですが強度が優れていて見た目も美しく百年以上持つとされています。和紙になるまで数多くの工程があり、手間ひまかかりますが大変優秀で優雅な製品だと思います。遊びに行った時には子どもながらによく見ていたので懐かしく思います。
若かりしきのじいちゃん
1.栽培
楮という木を使います
2.刈り取りと裁断
水分の少ない12月から1月に行う。原木の根元を鎌で斜めに切っていく。
刈り取った原木は押し切りと言う道具で1mくらいにそろえる。
3.原木蒸しと木口叩き
せいろ蒸しと同様に蒸気で原木を蒸して木口を叩き「原木」と「表皮」を分離しやすくする
4.原木と表皮の分離
蒸すことで木の芯と表皮が剥がれやすくなる
5.黒皮乾燥
剥いだ黒皮は束にして自然の風にさらす
6.黒皮そそり
使用する分だけ半日ほど水につけ剃刀又は包丁で表皮を削る。
和紙の強靭を残すために表皮と白皮の間のあまかわ部分を残す。
7.水洗い
清水の中で不純物を除去し洗い流します。
この時期になると人手が要るので近所・親戚等に手伝いに来て頂きます。
再び天日干したのが白皮になります。これを貯蔵しこれでいつでも紙漉きが出来ます。
8.煮熟
楮は乾燥して保存しているため、楮は煮る前に、2、3日水槽に浸して、やわらかくしておきます。楮の重量に対して15~20%のアルカリ性薬品(ソーダ灰、苛性ソーダなど)を入れた水溶液で約2時間~3時間煮、皮から不純物を溶かし出し、やわらかくします。また、伝統的な製法では木や草の灰を使用していました。なお、一部地方では「かず煮」と呼びます。
9.ちり取り
煮終えた原料を清水の中に放ち1本1本塵などを取り除く。この作業が一番時間を要しどれだけ時間をかけるかで仕上がりに左右が出ます。
10.楮(こうぞ)打ち
煮あがった原料を人力又は機械にて叩いて繊維を細かくほぐして行く。
11.打解(くさ打)
楮(こうぞ)をビーター(打解機又は細分機)にて、叩解します。繊維がバラバラに解して行きます。
これでやっと紙素(シソ)の完成になります。
あと必要なものはトロロアオイです。つぶしたトロロアオイの根から粘液を抽出します。これをこします。
綺麗なねりが取れました。
トロロアオイが入ることでねりが出て原料が長い間沈まずにいてくれます。
※トロロアオイの他にアオギリの根、ノリウツギの皮、キンバイソウの根なども同様の効果があります。
12.紙漉き(抄紙)
漉き舟に水・原料・トロロアオイを入れ混ぜ棒によって均等に分散させる紙漉きは3つの工程で行われる。数子・調子・捨て水
数子: | すばやく漉き舟の原料をすくいあげる |
調子: | 原料を比較的深くすくい上げ前後に調子をとりながら繊維を絡み合わせ和紙の層を作る |
捨て水: | 水や原料を一気に振るい捨てる |
爪が沢山付いているクシみたいな形のものが馬鍬(まぐわ)といいます。これで攪拌します。水・原料が均等に混ざります。
いい塩梅に混ざりました。ここにねりを加えることで攪拌された状態が保たれます。ある程度時間が経っても紙素が沈みません。この間に紙漉きを行います。
いよいよ紙を漉きます。数子・調子・捨て水を繰り返し漉いて行きます。
水を含んだ簀桁(すけた)は数キロから数十キロと重くとても長い時間持っていられませんので上部の竹に吊るして軽くしています。先人の知恵ですね。
漉きあげた素の上の和紙は水を切った後台へ移す。1枚1枚日台の上に重ねます。
13.圧搾
重ねた和紙を圧搾機を使って圧をかけながら絞っていき余分な水分を抜きます。
14.乾燥
釜に薪を焚き鉄板を暖めそこに和紙を貼り付けて乾燥させた。貼り付け乾燥と短時間で仕上がるため一定の熟練した呼吸が必要です。釜は表裏とあり一度に6枚貼り付け可能です。
写真はじいちゃんの親である。乾燥中での記念写真。バックにあるようにこの世代は、和紙をはけを使ってイチョウの板に貼り付け天日で乾燥させた。時間が経つにつれて和紙に張りがでて輿のある張りのある美しい和紙に仕上がった。ただ作業は晴れの日限定もあり乾燥まで時間も相当要した。
※鉄板と天日の仕上がり比較
鉄板乾燥:
天候に左右されない。天日乾燥より材質が硬く仕上がります。
天日乾燥(板干し):
メリット→水分量により和紙と木板両方が収縮するため、出来上がりがやさしい。ゆっくり乾燥させるため繊維が締まり強度が増す。木目が付く。紫外線により白くなる。百年以上使える。
デメリット→晴れた日にしか作業出来ない。乾燥時間がかかる。
15.裁断
厚さ・ムラ・破れ・傷跡・塵などのあるものを除く。用途別に裁断する。
裁断するものは企業なら機械裁断などだが一般には主に和紙専用の包丁が使用される。この包丁見た目中華包丁のようだが切れ味が半端ない。怖いくらい切れ味がすごい。子どもの時触って怒られた事がある。ちょっとネットで調べたが値段も半端ないぞ。
以上。参考までに記載しました。
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